東海地方の神社様より桧扇と鉾先鈴の修理をご依頼いただきました|浦安の舞の桧扇修理事例⑨・神楽鈴修理事例②

菊理のホームページをご覧いただきありがとうございます。

菊理は神社で使われる祭礼用品・調度品の新調や修理のご相談を承っており、
この記事では「祭祀舞『浦安の舞』で使われる鉾先鈴と桧扇を修理してほしい」というご相談についてご紹介します。

修理前の浦安の舞の桧扇と鉾先鈴

祭祀舞「浦安の舞」は正式には前半後半の二部構成で、前半の一帖は檜扇で舞う「扇の舞」、後半の二帖は神楽鈴を用いる「鈴の舞」となっています。

神楽鈴には三種の神器の一つ「草薙の剣(天叢雲の剣)」を象徴する「鉾先鈴(剣先鈴)」のほか、古代より吉数とされる「七、五、三」を数える十五個の鈴が付いたものの二種類があり、地域や奉奏の場により使い分けられます。

そして檜扇や神楽鈴は、日常的に神楽舞や祭祀舞で使用していると、必然的に次第に傷みや不具合が出てきます。

たとえば檜扇の場合

  • 綴じ糸が切れた
  • 桧の薄板が割れた
  • 桧扇の要(かなめ:金具)が壊れた

神楽鈴の場合は

  • 鈴が取れた、割れた
  • 鈴を吊る金具が切れた
  • 剣の部分が汚れたり錆びたりしてきた
  • 剣の部分がグラグラしてきた。取れてしまった

こうした破損や劣化は決して珍しいことではありません。

特に、多くの神社では氏子地域の子どもたちが祭礼で舞姫として舞を奉納することが多いため、こうした道具の扱いに慣れない子どもたちが練習で繰り返し使ううちに、思わぬ故障や破損が生じてしまうことも少なくありません。

お客様のお問合せ内容

「いつ購入したものかは分からないものの、長年大切に使われてきたもので、鉾先鈴が4台、桧扇が4面あり、

  • 鉾先鈴の鈴を取り付ける金具が壊れ、針金で応急処置している箇所がある
  • 鉾先鈴の剣と鍔(つば)の接合部分がぐらついている
  • 桧扇の要(かなめ:金具)が外れ、ネジ留めで応急処置している
  • 桧扇の開閉がスムーズにいかないものがある

せっかくなので、すべて見てもらって、悪いところがあれば直したい」とのご相談でした。

まずは状態を確認するため、お写真をお送りいただき、その後、オンライン(Zoom)での打ち合わせを行い、依頼品をお送りいただくことになりました。

状態診断

お預かりした桧扇4面と鉾先鈴4台は、それぞれの専門職人が一つひとつ丁寧に状態を確認しました。

桧扇の状態と修理内容

4面の桧扇はいずれも、長年の使用によって綴じ糸が古くなっていました。綴じ糸は古くなったり使っているうちに「撚(よ)りが戻ったり」「伸びたり」して、檜扇の薄板と薄板の間が開いて緩くなったり、糸が切れてしまうことがあります。そのため、4面とも古い糸を新しい糸に替えて綴じ直すことに。

また、要(かなめ:金具)が外れていた1面には、応急処置のネジ留めがされていましたので、これを正規の要に取り替え、あわせて綴じ直しました。要も使っているうちに緩んできて、ガタついたり、最悪は外れてしまいます。

さらに、1面の檜扇には桧の薄板が割れている箇所がありましたが、幸い軽微な割れでしたので、こちらも補修対応しました。

また、開閉がスムーズに行えず開きにくくなっている檜扇があり、原因を診断すると、彩色に使用される膠(にかわ)が必要以上に多過ぎ、桧の板同士が癒着しやすくなっていることが分かりました。

この部分は構造上、完全に元の状態に戻すことは難しいため、開閉のしづらさ、そのものを修理することはできませんが綴じ糸を新しくすることで、若干、開閉が改善されることが見込まれます。

鉾先鈴の状態

4台の鉾先鈴についても、詳しく状態を診断しました。

ご相談のあった剣と鍔の接合部のぐらつきのほか、いつの時期かは分かりませんが、おそらく、以前に接着剤で補修されたと思われる箇所があり、その接着剤が経年によって変色し、見た目にも目立つ状態になっていました。

また、長年の使用によって剣の光沢が失われ、くすみが見られるほか、外れてしまった鈴を針金などで留めているものも複数個所あり、こちらは応急的に補修されたものと思われます。

桧扇と鉾先鈴の状態診断の結果をお客様に説明し、お見積りをお作りしました。

桧扇は修理、鉾先鈴は「もう少しこのままで」とご提案

今回の鉾先鈴の修理において、鍔(つば)は多少の傷や変色はあるものの再利用できる状態ですが、剣の部分の修理は、剣を新調して接合する以外に方法は無く、それなりの費用がかかることになります。

一方で、若干のぐらつきはあるものの、舞で使用するという点では、現状でもまだお使いいただくにあたっては支障がない状態と判断し、浦安の舞を指導する立場でもある菊理から、

「見栄えを容認できるのであれば、このまま現状でお使いいただけます」

とお伝えしました。修理をお勧めするだけではなく、修理費用(コストパフォーマンス)を考慮し、今の状態でどこまで使用できるのかを見極め、お伝えすることも、修理をお受けするうえで大切なことだと考えています。

お客様からは、

「鉾先鈴はまだ使えるとのことなので、今回は4面の桧扇の修理だけをお願いします。鉾先鈴はもう少しこのまま使ってみます。」

とのお返事をいただきました。

修理を終えた4面の桧扇をご納品

正式な修理依頼をいただいた約1か月半の後、4面の桧扇が修理を終え、無事にご依頼主のお客様にご納品しました。長く使われてきた桧扇が、今後も末永く地域の舞姫さんも元で、浦安の舞の採物として役割を果たしてくれることを願っています。

例年10月にはお祭り(例祭)が行われるとのこと。その大切な例祭の舞の場で、菊理が修理させていただいた桧扇が使われることを思うと、私たちも嬉しく思います。

お祭りのご盛儀を、心よりお祈り申し上げます。

桧扇の修理事例

神社で使われる雅楽・神楽道具の修理について

桧扇や神楽鈴、雅楽の楽器など、長年使用している道具に「少し気になるところがある」「これくらいならまだ使えるのか、修理した方がよいのか分からない」という場合も、まずはお気軽にご相談ください。

お写真やオンラインでの打ち合わせで確認できる場合もありますが、修理内容や費用については、実物を拝見してからの判断となる場合があります。

状態を確認し、必要な修理と、まだそのまま使用できる部分を見極めながら、それぞれの道具に合った修理をご提案しています。なるべく専門用語を使わず、やさしく丁寧にご案内させていただきますのでお気軽にお問合せください。

鉾先鈴・神楽鈴修理事例
ご相談について

菊理は、対面でのご相談やお話を大切にしております。メールや文字だけのやり取りでは、誤解や行き違いが生じることも少なくありません。

そのため、直接お会いするのが難しい場合には、ZoomやLINE動画を利用したオンラインでのお打ち合わせをおすすめしています。なるべく専門用語を使わずご説明させていただきますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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