雅楽楽器「鞨鼓」修理事例②「革が緩んでボコボコと鈍い音しかしない」鞨鼓の基本と日常の取り扱い方|雅楽楽器のお困り事は菊理にご相談ください
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菊理は雅楽楽器の購入やメンテナンス、修理、普段のお手入れに関するご相談も承っています。今回は「鞨鼓の修理と日常のメンテナンス相談」を一例としてご紹介いたします。
(「鞨鼓」は「羯鼓」とも表記しますが、この記事では「鞨鼓」としています)

内容
今回の鞨鼓は祭典で30年以上は使用されているようで、現在の古参の伶人さんも「いつからあるか分からない」という年代物。鼓面の革が緩み「打つとポコポコとした鈍い音しかしなくて鞨鼓独特の澄んだ音が出なくなった」とのご相談でした。
*伶人(れいじん)とは、神社教会などでの雅楽演奏者のこと
そもそも「鞨鼓」とは

鞨鼓は雅楽の合奏の中でテンポを刻み、指揮者のような重要な役割を担っています。「コロコロ」と澄んだ音色が特徴で、2本の桴(バチ)で掻(か)くように打つ「片来(かたらい)」「諸来(もろらい)」といった独特な奏法があります。
知らないと損!鞨鼓の取り扱いと保管のポイント

鞨鼓は中央が少し太くなった円筒形の鼓胴の両端を馬の革で作られた2枚の鼓面で挟み込み、大調べ、小調べで締め込んでいます。鞨鼓の保管時は、革を休めるために小調べを少しゆるめなければなりません。
そして小調べを緩めたままで演奏すると、それはそれで革の寿命を縮めることになりますので、演奏時には鼓面を適度な張りにするため締め直します。
※鞨鼓の調べ緒の扱い方や正しい演奏方法の指導(出張レッスン)も承っています。お気軽にお問い合わせ ください。
状況診断①鞨鼓本体部分

経年による劣化がかなり進んでいます。
◆コンディション診断
- 大調べが伸び切って、しっかり張れない状態
- そのため大調べの中ほどを別の紐で締めている
- 小調べも経年劣化ですり切れている
- 小調べも適当な紐で縛り直してはいるものの、間違った縛り方をしている
- 鼓面はいつ破れてもおかしくない状態
状況診断②台

本来、羯鼓の台は分解しません。しかしこちらでは収納スペースの関係で、毎回分解して保管しているとのこと。


◆コンディション診断
- 台の継ぎ目がゆるみグラグラして不安定
- 経年により漆が剝げてしまっている
修理後

◆修理したところ(鞨鼓本体)
- 鼓面を2枚とも新しいものに交換
- 大調べを新しい革に張り替え締め直し
- 小調べも新しい紐に交換し締め直し

◆修理したところ(台部)
- 継ぎ部分を修理しグラグラしないよう調節
- 漆の塗り直し
『鞨鼓を長く大切に使うために』正しい取扱い方と日々の保管方法を指導

ご納品時に菊理は「日常の取り扱い方と保管方法」をていねいにご説明しています。
◆日常の取り扱いポイント
- 鞨鼓本体を持ち運ぶ時に「持つべき部分」「持ってはいけない部分」
- 使用しない時の鼓面(小調べ)の緩め方
- 演奏時の鼓面の張り加減(小調べの締め加減)
- 適切な保管場所(温度、湿度、紫外線)

今までは収納スペースの都合で分解していたとのことですが、台は分解してはいけません。そのため鞨鼓本体、桴、台が全て収まる「鞨鼓専用箱」をご用意し収納方法をご指導しました。
鞨鼓を長く大切に使うためには「日常の正しい取り扱い方と保管方法」がとても大切です。
◆ご返却

今回は経年劣化が進んでいたため、部品を再利用することは難しいと思われますが、これまで使用されていた鼓面、大調べ、小調べはすべてご返却させていただきました。
■ 「鞨鼓」修理事例ご紹介
鞨鼓の不具合にはさまざまな原因があります。その他の事例をご紹介しますので、ぜひ下記リンクをご覧ください。
日本の伝統品、工芸品は基本的に「壊れる」ことを想定して作られています。「鳴らないから」「音が出づらいから」そんな時でも諦めず一度菊理にご相談ください。
菊理は、長く鞨鼓を楽しんで使っていただけるよう、ご納品時には「日頃のお手入れ」や「メンテナンスの方法」をしっかりご指導させていただいています(希望者のみ)。
雅楽の楽器はとてもデリケート。日常的なお手入れと定期的なメンテナンスを心掛けましょう。「音が出にくい」とお困りの方はぜひご相談ください。
- 鞨鼓を持ち上げる時に「持つ部分」「持ってはいけない部分」
- 使用しない時の鼓面(小調べ)の緩め方
- 演奏時の鼓面の張り加減(小調べの締め加減)
- 適切な保管場所(温度、湿度、紫外線)
- 「今さら聞きづらいけど、これで良いのかな」
そんな疑問をお持ちの方は、ぜひ菊理の オンラインレッスン をお役立てください。ZoomやLineに対応していますのでお気軽にご相談ください。
菊理は使われなくなった雅楽楽器や衣裳の買取りもしています。
お買取りさせて頂いた楽器や装束の一部は、雅楽普及のため「子ども向け雅楽教室」の体験用楽器、装束に活用しています。眠ったままの雅楽楽器や装束などでお困りの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
雅楽菊理
文化庁「文化芸術による子供育成総合事業」協力芸術家
古物商許可証番号:愛知県公安委員会 第543952103200号