雅楽楽器「笙」修理事例④「在庫40年の新品笙のメンテナンス依頼」笙のお困り事は菊理にご相談ください

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菊理は雅楽楽器の購入やメンテナンス、修理、普段のお手入れに関するご相談も承っています。今回の記事ではお客様からご依頼いただいた「笙のメンテナンス相談」を一例としてご紹介いたします。

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「笙」に関するご相談は菊理にお任せください

昭和の時代に仕入れたまま40年以上新品状態で在庫されていた「笙」の事例です。

とある和楽器屋さんから

「”笙を探している”というお客様が当店の笙を購入したいとのことだが、新品とは言え長期在庫の楽器なので、販売前にメンテナンスをお願いしたい」

とのご相談を頂きました。まずは笙をお送りいただき、状態診断からスタートです。当初「袖管の煤竹本管」と伺っていたのですが、送られてきた笙は・・

※袖管(そでかん):だるま管とも。竹管が通常の笙より短く、持ち運びしやすいよう製作された笙。

『そもそも笙の音の鳴る仕組みって?』解説

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雅楽楽器「笙」の分解写真(知識と技術の無い方は決して分解しないでください)

笙の外見を一言で言うと「両手で包むように支え持つ『頭(かしら)』という、黒いおわんのような部分に、17本の細い竹が差し込まれている」となります。

細い竹の根元(根継:ねつぎ)には笙が音を出す部品として「響銅(さはり)」という金属製の「簧(した:リード)」が付いています。現代の笙は17本の竹管のうち2本は音が鳴らない構造になっており、残りの15本の竹管がそれぞれ割り当てられた高さ(ピッチ)の音を出します。

このリードが息を吐いたり吸ったりすることによって振動し、竹管や楽器全体と共鳴して笙独特の澄んだ綺麗な音が鳴るのですが「音が出にくい」のはリードに問題がある場合が多いのです。

今回の笙は新品とは言え40年以上の前のものですので、まずは笙の状態の診断から。

外観チェックによる楽器の初期診断

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笙はとてもデリケートな楽器です。修理やメンテナンスは菊理にお任せください

状況診断にはまず笙を分解して状態をチェックするのですが、今回の笙は明らかに「楽器」として使えないほど劣化が進んでいました。

【外観からのコンディション診断】

  • 吹口(ふきくち:息を入れる部分)がひどくさびている
  • 銀の帯(17本の竹管を束ねているリング)がさびている
  • 竹管の付け根と頭(かしら:黒いお椀の部分)が経年により固着しており分解すると折れる危険性がある
  • 本管の袖管ではなく初期のプラ菅の通常型の笙である
  • 竹は煤竹ではない

以上から「楽器としての再生は難しい」と判断し、お客様へその旨ご連絡しました。

お客様へ状態をご説明

お客さまには上記の【外観からのコンディション診断】と「楽器としての再生は難しく修理は困難である」旨をご説明したところ、

「壊れても良いので分解して、中の状態を確認してほしい」とのこと。

お客様からのご要望により改めて笙を分解し、より詳細な楽器診断をさせていただきました。

詳細な楽器診断

慎重に分解していき判明したのが

  • リードが古いタイプの「2枚舌」。このタイプは修理不可能
  • 保存状態がひどく竹の状態も悪い
  • 仮に修理に着手する場合でも15枚のリードを全て取り換える必要がある
  • 吹き口の錆びた金具を取り替える必要がある

この修理は手間と費用の負担が大きく、樹脂製のプラ管の楽器に対しての修理としては修理費用が高額になるためコストパフォーマンスが大変に悪い旨を、改めて分解工程の写真をお送りのうえ、お客様にご説明しました。

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お客様にご返送

古い笙の楽器診断は菊理にお任せください

お客様からは「修理は諦めますので返送してください」とのご判断により、修理を施さず依頼品の笙を組み直し、返送させていただきました。

今回のように、残念ながら修理対応が難しい楽器もありますが、菊理は可能な限り雅楽を奏でられる楽器としての修理やメンテナンスに取り組みます。

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日本の伝統品、工芸品は基本的に「壊れる」ことを想定して作られています。「鳴らないから」「音が出づらいから」そんな時でも諦めず一度菊理にご相談ください。修理費用をお見積りさせていただきます。

■ 「笙」修理事例ご紹介

笙の不具合にはさまざまな原因があります。その他の事例をご紹介しますので、ぜひ下記リンクをご覧ください。

「遺品の古い笙」修理事例
「笙の温め方に問題があった」事例
「壊れた笙は捨てるしか無い?」事例

菊理は、長く笙を楽しんで使っていただけるよう、ご納品時には「日頃のお手入れ」や「メンテナンスの方法」をしっかりご指導させていただいています(希望者のみ)。

笙は和音の美しい優美な楽器ですがとてもデリケートな楽器です。日常的なお手入れと、定期的なメンテナンスを心掛けましょう。「音が出にくい」とお困りの方はぜひご相談ください。

「どのように笙を温めたらいいか」
「どのくらい温めたらいいか」
「今さら聞きづらいけど、これで良いのかな」

そんな疑問をお持ちの方は、ぜひ菊理の オンラインレッスン をお役立てください。ZoomやLineに対応していますのでお気軽にご相談ください。

菊理は使われなくなった雅楽楽器や衣裳の買取りもしています。
お買取りさせて頂いた楽器や装束の一部は、雅楽普及のため「子ども向け雅楽教室」の体験用楽器、装束に活用しています。眠ったままの雅楽楽器や装束などでお困りの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。本管はもちろん、プラ管もお引き受けいたします。

雅楽菊理
文化庁「文化芸術による子供育成総合事業」協力芸術家
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