雅楽楽器「笙」修理事例③「古い笙があるが使えるか」「笙の竹が折れてしまった」笙のお困り事は菊理にご相談ください
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菊理は雅楽楽器の購入やメンテナンス、修理、普段のお手入れに関するご相談も承っています。今回の記事ではお客様からご依頼いただいた「笙の修理調律」を一例としてご紹介いたします。

笙の修理と調律
今回ご相談いただいたのは3管の「笙」。
何年間もずっと倉庫にしまい込まれていたけれど「楽器として使えるのなら修理してほしい」とのこと。
『そもそも笙の音の鳴る仕組みって?』解説

笙の外見を一言で言うと「両手で包むように支え持つ『頭(かしら)』という、黒いおわんのような部分に、17本の細い竹が差し込まれている」となります。
細い竹の根元(根継:ねつぎ)には笙が音を出す部品として「響銅(さはり)」という金属製の「簧(した:リード)」が付いています。現代の笙は17本の竹管のうち2本は音が鳴らない構造になっており、残りの15本の竹管がそれぞれ割り当てられた高さ(ピッチ)の音を出します。
このリードが息を吐いたり吸ったりすることによって振動し、竹管や楽器全体と共鳴して笙独特の澄んだ綺麗な音が鳴るのですが「音が出にくい」のはリードに問題がある場合が多いのです。
では3本の笙の状態の診断をしていきましょう。
※注意!笙の知識と技術の無い方は決して笙を分解しないでください
状況診断1本目

1本目の笙は、全て天然素材で製作された「 本管(ほんかん)」と呼ばれる楽器です。
分解してチェックしたところ、全ての竹の根元にリードが付いており状態も良好でしたので、今回は「洗替(あらいがえ)」と言う作業と調律をさせていただきました。まだまだ現役で演奏できる笙です。
状況診断2本目

2本目の笙は「頭」と「根継」が樹脂製で、一般的には「 プラ管」と呼ばれる楽器です。
1本目と同様、全ての根継にはリードが付いており、欠損している部分はありませんでしたので、こちらも洗替と調律をさせていただきました。
プラ菅は本管に比べ価格がリーズナブルではありますが、デメリットが多いのが欠点です。
◆プラ菅のデメリット
- 音質が本管に劣る
- 本管以上に日頃の取扱い方に注意が必要
- メンテナンス性、耐久性に問題がある
本管は定期的なメンテナンスをすることで長く楽器として演奏が出来ますが、プラ菅はデメリットが多いため菊理ではあまりお薦めしておりません。
状況診断3本目

3本目にチェックした笙も プラ菅でした。
この笙は「上(ジョウ)」という竹管が、根継の部分で折れてしまっていました。こうなると竹管と根継を交換するという修理以外に手の施しようがありません。この修理は手間と費用の負担が大きく、プラ管の楽器に対しての修理としてはコストパフォーマンスが大変に悪いことから、残念ですが洗替などせずこのままお客様へお返ししました。
壊れた笙はどうしたらいい?処分するしかない?

「壊れてしまって使い物にならない笙は捨てるしかない?」
いえいえ、楽器として使うことは出来ませんが、リードや折れた竹管以外はまだまだキレイな状態。いわゆる「部品取り」として、他の笙が故障した時の部品供給のために保管いただくことをお勧めしました。
日本の伝統品、工芸品は基本的に「壊れる」ことを想定して作られています。「鳴らないから」「音が出づらいから」そんな時でも諦めず一度菊理にご相談ください。
『笙を長く楽しむために』取扱説明と指導

修理可能な笙には適切な処理と修理を施し、ご依頼者様にお渡しすると共に改めて笙の温め方を始めとする手入れの方法をご指導しました。
■ 「笙」修理事例ご紹介
笙の不具合にはさまざまな原因があります。その他の事例をご紹介しますので、ぜひ下記リンクをご覧ください。
菊理は、長く笙を楽しんで使っていただけるよう、ご納品時には「日頃のお手入れ」や「メンテナンスの方法」をしっかりご指導させていただいています(希望者のみ)。
笙は和音の美しい優美な楽器ですがとてもデリケートな楽器です。日常的なお手入れと、定期的なメンテナンスを心掛けましょう。「音が出にくい」とお困りの方はぜひご相談ください。
「どのように笙を温めたらいいか」
「どのくらい温めたらいいか」
「今さら聞きづらいけど、これで良いのかな」
そんな疑問をお持ちの方は、ぜひ菊理の オンラインレッスン をお役立てください。ZoomやLineに対応していますのでお気軽にご相談ください。
菊理は使われなくなった雅楽楽器や衣裳の買取りもしています。
お買取りさせて頂いた楽器や装束の一部は、雅楽普及のため「子ども向け雅楽教室」の体験用楽器、装束に活用しています。眠ったままの雅楽楽器や装束などでお困りの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。本管はもちろん、プラ管もお引き受けいたします。
雅楽菊理
文化庁「文化芸術による子供育成総合事業」協力芸術家
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