雅楽楽器「笙」修理事例「音が出にくくなった」「出ない音がある」時は菊理にご相談ください

菊理のホームページをご覧いただき、ありがとうございます。

菊理は雅楽楽器の購入やメンテナンス、修理、普段のお手入れに関するご相談も承っていますが、今回の記事では「笙の修理調律」をご紹介いたします。

雅楽楽器のご案内はこちらでご覧ください

「笙」に関するご相談は菊理にお任せください

『笙の音がなんだか出にくくなった』状況診断

笙はとてもデリケートな楽器です。修理やメンテナンスは菊理にお任せください

「最近、音が出にくいんです」
と、ご相談をいただきました。
一見、どこがおかしいか分からないくらい、大切にされているキレイな笙です。

早速、状況診断をさせていただきました。

雅楽楽器のご案内はこちらでご覧ください

『そもそも笙の音の鳴る仕組みって?』解説

雅楽楽器「笙」の分解写真(知識と技術の無い方は決して分解しないでください)

笙は、黒いおわんのような部分(=頭:かしら、と云います)に17本の竹が差し込まれています。
現代の笙は17本の竹管のうち、2本は音が鳴らない構造になっており、残りの15本の竹管の根元(根継:ねつぎ)に「響銅(さはり)」という金属製の「簧(した:リード)」が付けられていています。

このリードが振動することによって、あの笙独特の澄んだ綺麗な音が鳴るのですが
「音が出にくい」のはリードに問題がある場合がほとんどです。

今回の笙の「音が出にくい」原因は、やはりリードの損傷でした。

▷雅楽楽器についてのお問い合わせはこちらお問い合わせ

『リードの損傷とは』状態解説

竹管の根元(根継)とリード部分の正常な状態と損傷のある状態(拡大写真)

黒いラインを挟んで左方は正常な状態の笙、右方は今回の損傷した状態の笙です。

笙のリードには青石(しょうせき)という孔雀石(=マラカイト)を粉末にしたものが塗ってあります。
左の①②の丸で囲んだリードは、きれいな水色がハッキリ見えますね。笙のきれいな音はこの青石がポイントです。

しかし今回の笙③④は、残念ながら青石の状態に問題があったため、音が出なくなっていました。
(④の下のリードも同様ですね)

▷雅楽楽器についてのお問い合わせはこちらお問い合わせ

『何が問題なの?』原因の解説

温め過ぎて蜜蝋が溶け出し、リードに塗られた青石に滲んでしまった状態

原因は笙の「温め方」にありました。

そもそも笙は、演奏直前にリードを含め楽器全体をしっかり(最低20分ほど)温める必要があります。
演奏中も曲の合間には温め、更に演奏後はしっかり温めて収納する必要があります。

温め方が足りないと青石が剝がれてしまい、綺麗な音が出ないだけでなく、音そのものが出なくなってしまいますが、
今回の原因は「温め過ぎ」にあるのではないかと推測されます。

笙を温める「電気コンロ」(本来は炭火で炙るのがベストです)

リードを根継に取り付けるために「蜜蝋(みつろう)」という天然素材の樹脂を用いるのですが、この蜜蝋は冷えた状態ではとても固く、適度に温めると弾力性を持ちます。

そのため蜜蝋が冷えた状態で音を出し始めるとリードの細かい振動で、根継からリードが剥がれてしまいますので、笙全体を適度に温めてから笙を吹く必要があります。

今回の症状は、この蜜蝋を必要以上に加温したため、蜜蝋が溶け出しリードに塗られた青石に染み込んでしまい、音が出なくなってしまっていました。

まだ新しい笙で、ご依頼主様も丁寧に扱われていたと思います。
楽器の状態診断の結果と概ねの修理費用をお伝えし、ご納得いただいたうえで修理に入りました。

雅楽楽器のご案内はこちらでご覧ください

『笙を長く楽しむために』取扱説明と指導

菊理はあなたの大切な笙を長くお使い頂けるよう、お手入れ(メンテナンス)の方法をしっかりご指導します

適切な処理と修理を施し、ご依頼者様にお渡しすると共に
改めて笙の温め方をはじめとする手入れ方法をお伝えしましたところ

ご依頼者様も心当たりがあったご様子。
菊理が当初ご指導した手入れの仕方を守らなかった時があったとのことでした。
今後は習った基本に従って笙の手入れを心掛けてくださると仰ってくださいました。

菊理は、長く笙を楽しんでいただけるよう、ご納品時に「今後のメンテナンス方法」をしっかりご指導させていただいています。

「どのように笙を温めたらいいか」
「どのくらい温めたらいいか」
をしっかりお教えさせていただきました。

笙は和音の美しい優美な楽器ですがとてもデリケートです。「音が出にくい」とお困りの方はぜひご相談ください。
雅楽の楽器は一つ一つがとてもデリケートです。日常的なお手入れと、定期的なメンテナンスを心掛けましょう。
ZoomやLINEなどオンラインも対応していますので、お気軽にご相談ください。

菊理は使われなくなった雅楽楽器や衣裳の買取りをしています。
お買取りした楽器や装束の一部は、子ども向け雅楽教室の体験用楽器、装束に使用しています。眠ったままの雅楽楽器や装束などでお困りの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。本管はもちろん、プラ管も買取りいたします。

雅楽菊理
文化庁「文化芸術による子供育成総合事業」協力芸術家
古物商許可証番号:愛知県公安委員会 第543952103200号